築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

「営業権で、移転を止める」(前)

f:id:nowarsgnaction:20180730000101j:plain

今、築地市場で話題の「営業権組合」
6月21日に仲卸有志と女将さん会により発足した新組合は、問い合わせも相次ぎ、7月20日時点で加入者が100人を突破。
そんな中、7月21日、「営業権で、移転を止める」と題した第三回学習会が、場内の3F講堂で行われました
前後編二回に分けて、その内容をリポートします。
 
会場には、場内・場外から、および一般の聴衆も含めて50人近くが集まり、「卸売市場法改悪」問題について築地と連携を深めている仙台中央市場協同組合の菅原組合長も発言者として駆けつけました。発言だけではなく「この動きを会報に書いて、全国の卸売市場に知らせるための取材」で来た、と意気込んでおられました。また、豊洲の現状については森山高至さん、水谷和子さんもフロアから解説してくださいました。
 
基調講演は前回に引き続き明治学院大学・熊本一規名誉教授原発立地や公共工事による立ち退きに対し、住民の権利を主張して対決してきた方です。
 
築地市場の移転に関して「事業者は営業権を主張できる」とする、この組合のバックボーンとなるのが
豊洲への移転を決められるのは、東卸(東京魚市場卸協同組合)などの既存の組合の総代会・理事会ではなく、各事業者(組合員)である」
ということ。事業者こそが正当な権利者であり、その社会的地位・発言権を向上することが、新組合の目的と定めました。
 
今回の先生の講義は、「東卸の総代会決議と組合員の権利」として、協同組合の定義から豊洲移転についての決定権は誰にあるのか、そして、営業権とは何か、どんな場合に発生するのか、という内容。
 
「協同組合」とは。
 まず、「中小企業等協同組合法」に基づく協同組合である東卸の意思決定は正しくはどうあるべきか、現状の理事会の決定のやり方はどう問題なのか、ということ。
 本来の法的根拠である「協同組合法」では、組合は社員(加入する事業者・個人)が決定するものであり、特に重要なことがらは総会決定が必要とされている。しかし東卸の定款そのものが「協同組合法」に反しており、総会議決の優先を排し、総会の招集のルールや議決の対象となる事項の定義も縮小した「法律違反」である。
 本来、法的には豊洲移転のような最重要事項については総会特別決議で決定されるべき(重要性の高い順に、総会特別決議>総会普通決議>総代会決議>理事会決議となる)であり、東卸が総代会決議で決めたことは「無権代理行為」という、権利のない者が「勝手に声をあげた」にすぎない。
 
こうした決定プロセスの矛盾に加えて、豊洲移転に関しての熊本先生の指摘は「一番理不尽なのは、事実上の立ち退きなのに移転費用も自腹で無理やりやらされること」。
これは移転に賛成(仲卸アンケートによればはっきり「賛成」はほとんどなく、「しかたない」という「移転容認」レベル)か反対か、の立場を越えて、移転の話が出たときからすべての事業者が負担に感じてきたことです。
そこで、上記の協同組合法に基づき、仲卸業者こそが「営業権」の権利者であるという話になります。
 
「営業権」とは。
長年の営業活動により生じた無形の経済的利益(無体財産権)。
であり、
「営業権」に基づいて、廃業や損失に対して補償しなくてはならない場合とは。
1.行政機関から特許または許認可を受けてはじめて営業することができるもの
2.創業以来長年にわたり顧客の信頼を得て築き上げた名声や信用としての「暖簾」
があり、
そのため同程度の同種事業者に比べて「高い収益力=超過収益力」を有する事業者。
 
つまり、築地の業者は
1.都から許認可を受けて開設し
2.「築地ブランド」の暖簾、立地がある
ため、営業権がある。
 
 この営業権の補償を定めたものが
「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」
(要綱とは閣議決定で定められたもので、国会で審議された「法律」に準ずるもの。この要綱は憲法29条:財産権に基づくため、重い規定)の31~33条:「営業廃止」「営業休止等」「営業規模縮小」の補償である。
 
営業権組合では具体的に「次のような場合の「補償」をさせることができます」と告知して組合員を募っていますが、その根拠となるのがこの「要綱」です。
 
営業廃止:「本当は営業を続けたかったが、やむなく廃業せざるを得ない」
 「移転費用が捻出できないので廃業を考えている」 
営業休止:「引越しに伴って、休業を余儀なくされる」
営業規模縮小:「交通アクセスが悪く、営業の規模を縮小した」
 「豊洲へ移転したはいいが、売り上げが大幅にダウンした」
 「豊洲での商売に自信がなく、退職金を割増して従業員に辞めてもらおうと思う(このケースは事業者ではなく、離職者への直接補償)」
 
実際、移転の話が持ち上がった2001年以来、迷走する計画や豊洲の汚染や建築欠陥の問題、そしてまさに熊本先生の指摘にある「移転費用自腹」という理不尽さによって、すでに廃業をしてしまった業者さんもあります。これは国が補償の説明をしていない「加害行為」にあたるため、加害があったことを「知った時点」から3年が時効(実際の加害=廃業から、ではない)となるため、すでに廃業した事業者さんも補償が請求できる、とされます。
 
そして、今、混乱の中、豊洲への移転準備をしている事業者さんこそ、営業権を主張すべきであるとして、
学習会の後半は、その「規模縮小」が見込まれる根拠としての豊洲の欠陥について、また、仲卸以外でもどのように、移転によって損失を受けるか(営業権の侵害があるか)という質疑に入っていきます。
 
(後編へ)