築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

大田市場に行ってみよう(後編)

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夏休みも終わり、お子様たちの自由研究も片付いて、ほっとしておられる皆様。前回お伝えした大田市場見学レポートが少しでもお役に立っていれば幸いです。
 
さて、大田市場といえば、実際は魚よりも野菜。一日の取り扱い金額11億3200万円、占有率51%で都内最大、つまり日本最大の青果市場です。
前編で書いたように、青果と鮮魚は4つの建物が連続して配置されており、青果は3棟。見学コースとしては、屋上から青果の入り口まで戻っていくと、卸・仲卸両方をぐるりと一周できる2Fの通路に入ることができます。
青果卸は4社、仲卸は301店舗166業者、建物は中ではひとつながりになっており、なんと71,000㎡!全体が広大な体育館のようなフロアです。
一番左側が卸のトラック・バースに続いており、品物はここから入荷。鮮魚と左右対称になっています。
時間帯によるのかもしれませんが、トラックが直接中に入ることもでき、天井が高くバッファのある場内では、ウイングを開けて直接フォークで積み下ろしすることができます。青果は同じ品物が大量に入出荷しますから、当然ですね。まさかいまどき天井が低くてウイングが開かない市場があるわけがないですが。

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見学通路にもセリについての説明などの看板が少しあり、6:50のセリにはこの真下に何百人もの売買参加者が居並ぶと思うと壮観です。ちなみに、この説明看板は日本語のほかに英語・中国語・ハングル文字の三ヶ国語表記で、点字もあります。まさかいまどき公共施設で英語の案内しか申し訳程度にないところがあるわけがないですが。

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鮮魚と違い、青果は昼間でも品物が入荷したり移動させたりがあるので、ターレやフォークが大量の野菜のダンボールを動かしているところを見ることができます。見渡す限りのダンボールやケースの中は全部野菜や果物。これが毎日都民の胃袋に入ると思うと、圧倒されます。まさかいまどき2.5tのフォークが使えない市場があるわけがないですが。

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仲卸のお店はよく見ると一軒づつが蔵づくり風。1階に商品を置いて、2階が事務所のようです(鮮魚も同じつくり)。
豊洲の仲卸もこうしたデザインがされているのですが、鮮魚については天井が低く、2階に事務所を置くような有効活用ができません。まさかいまどき2階にハシゴであがる市場が、と、書こうと思いましたが、築地もそうです。豊洲は変なところだけ築地を踏襲しましたね。
 
ともあれ、大田の青果は、広大な空間を効率的に商品が流れていく様を上から一瞥することができ、卸売市場の仕組みを知るためには、豊洲よりもこちらの見学コースの方がビジュアル的にわかりやすいようです。
 
ついでなので、築地にはない花き(かき)市場を見てみましょう。花きを扱うのは都内11市場のうち5カ所。1988年に北足立から始まった、比較的新しい制度です(それまでは花きは民営)。
花きは敷地が違うので、一度正門を出て、首都高速の下をくぐって敷地西側に回ります。花き正門から入り、奥の玄関棟へ。

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仕入れには、青果や鮮魚とはまったく違う業者さんが来るのでしょうから、この遠さは問題にならないと思いますが、見学者にとっては徒歩約15分。セリは7:00なので、両方見るのは不可能です。
ここはモニターを使ったセリ場が二カ所(切り花と鉢物)、参加者は椅子に座ってパソコンに入力してセリ落とします。
見学コースには展示コーナーやフラワーアレンジメントがなされ、見本市の役目もしています。

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売り場全体はコンベアーや、ムカデのように連結されたターレが走り(花は重ねて積むことができないものが多いので)、ハコ車に鉢物が積まれた光景は、大きな園芸センターのよう。
ここでは仲卸から一般の方も買えるらしいので、活け花教室とか、100万本のバラを贈りたい方はどうぞ。
 
さて、最後は一般の方がいちばん楽しめる、関連棟。青果棟と鮮魚棟のあいだにありますが、上からではなく、青果荷捌き場のあいだを通って路面からアプローチできます。

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こんな感じの通路が二本。ちょっとした商店街風です。大田には場外はないので、飲食や一般客の買出しはこちらで。
市場グルメの飲食店は海鮮や寿司がめだちますが、ラーメンや中華、ステーキなどもあり、幅広く楽しめます。用度品や乾物ももちろんありますし、ヤマザキパンや、衣料品店、書店、なんと整体も。あと、卸での扱いはないのに、肉屋があり、業務用にしては少なめ、家庭用には多いかな?というロットで売っていました。
1988年開設ですが、昭和レトロな香りのするお店も多く、シブい喫茶店好きも訪れる価値があるかもしれません。

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「コーヒー・ハトヤ」さんに入ってみました。メニューがやたら多く、定食20種くらい、うどん、ラーメンにピラフやスパゲティも何種類もあります。ママさんはもれなくお客さんを「社長」と呼んでくれますよ。写真はシーフード・ハンバーグ。なんだろうと思ったら、シーフードミックスの入ったポテト(コロッケの中身みたいな)を焼いたものでした。
 
では、大田市場のいいところをまとめてみましょう。
・建物のあいだに道路がはさまっていない(花きをのぞく)。
・大型車の入出場の道路が複雑になっていない。
・荷物の入荷からセリ、分荷、出荷まで一定方向で流れていて、動線が交差しない。
・基本は平場なので、縦方向への移動は最小限。
・荷下ろし、荷積みのバッファが確保されている。
・トラックが場内に入ってウイングを開けることができる。
・通路が広く、ターレが走りやすい。2.5tのフォークが余裕で使える。
・仲卸店舗に余裕がある上、通路に商品を出して陳列できる。
・関連店舗はどこからでもアプローチしやすい(花きをのぞく)。
・見学通路から売り場がよく見える。
あたりまえのことを並べていると思いますが・・・この「すべてができない」のが豊洲新市場です。
 
30年前、スーパーなどの大量流通に対応した市場として設計された大田市場。品物を運び込んで、セリをして、ふたたびトラックで積み出す、という動線を広大な敷地にシンプルに展開した、非常にわかりやすいつくりの市場です。あたりまえですが、わざわざ広いところに4階建てにして商品をエレベーターで移動させたりはしません。このつくりは、30年たっても確実に機能しています。築地のような専門性のある市場とは異なりますが、大量流通を支えるには、最低限、この機能が必要なのは、実際に大田市場を見てみれば一目瞭然です。
私たちの舌を満足させる築地に対して、毎日の胃袋を満足させているのは大田市場かもしれません。
 

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豊洲市場は現在「安全宣言」に基づいて、農林水産省認可申請を出しています。
農水省は食の安全と、流通の安定を守る義務があります。
巨大な人口を抱える首都圏の市場に欠陥があれば、食品流通はたちまち危機に陥ります。
開場してみたらダメだった、ではすまないのです。
大田は移転に慎重な意見をくみいれ、青果と鮮魚の開場時期をずらしました。
築地を閉鎖してから豊洲を開ける、などはとりかえしがつかないことになります。
 
豊洲市場を認可しないで」。
農水省に声を届けましょう。
100-8950 千代田区霞ヶ関1-2-1
農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課
FAX:03-3502-0594
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引き続きこちらもよろしくお願いします。
都庁に声を届けましょう
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