築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

「めききのチカラ」川崎幸市場レポート

お知らせ:築地市場営業権組合による「お買い物ツアー」は、現在メンバーの怪我やインフルエンザのため、2019年のスタートが延期となっています。右記「みずたにさんのTwitter」により最新の情報を確認の上、再開の際はぜひ築地市場正門前にお集まりください。
 
1月12日から、豊洲新市場で土曜マルシェがはじまりました。場外がなく、一般客が仲卸で買うこともできない豊洲新市場で「賑わい創出」のための事業だそうです。
そもそも豊洲新市場が「賑わい」を前提とした施設でないことは、「千客万来施設」があれだけモメて開場が2023年に延期となっていることからも明らかですが。
しかもこの土曜マルシェは千客万来施設用地を使用。ここは青果棟の前の一等地。ここを市場業務のための車が通れなかったり駐車できなかったりすることで、動線に混乱が生じている場所です。そこに本来の用途ではない一般客向けのイベント、しかも市場と関係ないキッチンカーなども参入していては、むしろ仲卸や関連に対する業務妨害?

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もちろん、豊洲だけではなく、どこの市場も「卸売り」が業務であって、「小売」や「賑わい」は本来ではありません。
しかし築地の「賑わい」「観光」がもたらしたものは、単なる経済効果だけではなく、食や流通に対するひとびとの関心を高め、市場経由の食の安全を守る効果もあったはずです。
そして、それは築地だけのことではありません。卸売市場経由の流通が減少している今、各市場は消費者に親しみをもってもらうための取り組みを積極的に進めています。
前回ご紹介した足立市場などは小規模ながら都内屈指の発信力をもっています。ほかの市場も「イチバの日」など、一般開放イベントを実施したりしています。これらは行政やマーケティング会社が「賑わい」として押し付けたものではなく、市場業者の自発的な取り組みです。
今回ご紹介する川崎幸市場(通称。正式名称は川崎市地方卸売市場南部市場)も、毎月「いちばいち」と銘打った市場開放イベントを実施しています。
 

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川崎幸市場(水産・青果・花き)は、南武線尻手駅からすぐ。京浜道路沿いの好立地にあります。電車で行くにしても、尻手駅は川崎から一駅。乗り換え検索サイトでみたところ、新宿からなら45分と、豊洲新市場まで行くのとほとんど同じ。築地場内で年末の買い物ができなかった一般客のひとがここに向かったという話もあります。

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と、いうのも、ここはなんと水産と関連は「小売もしています」と明記。「いちばいち」でなくても、いつでも新鮮な魚が卸売り価格で買え、しかも小売を見込んだ小ロットのものや加工品も充実しているのです。
「いちばいち」ではふだん小売をしない青果と花きも開放。筆者が着いたのが遅く、青果の販売は見られなかったのですが、季節の花や旬の野菜が大変お買い得な価格で、近隣の方が殺到するらしいです。
水産も珍しいアンコウ・アンキモや、季節柄イカや貝類などが充実。ヤマト運輸の発送も利用でき、賑わっていました。

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関連は乾物が数軒と肉、玉子など、ひそかな人気は子ども用スニーカーなども扱う靴屋さん。また、ハーブティのお店や近隣の農家とのコラボ企画を扱う(今後クラフトビールなどもはじめるそうです)ブースなどの新たなこころみもはじまっています。

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飲食は魚河岸仲卸し定食・水喜、中華、チャーシュー丼の店の三軒。水喜にはこの日は行列ができていました。ミックスフライ(780円)、マグロ竜田揚げ(1080円)がすごいボリュームだと評判ですが、この海鮮かきあげ丼(780円)も丼サイズの分厚いかきあげにエビがたくさん。焼き魚や刺身盛りもあります。
 
川崎市にはこの幸区・南部市場と宮前区の中央卸売市場・北部市場があります。
規模は北部市場のほうが大きく、幸市場は敷地32000平方メートル、水産は卸1社、仲卸10社で取り扱い量は10000~15000kg/日程度と、きわめて小さな規模です。

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そして、北部が「中央卸売市場」なのに対し、ここは「地方卸売市場」
もともと昭和32年(1982年)に業務開始したときは、この南部が「本場」で、中原と高津に分場がありました。
北部市場が開場するのは昭和57年。しかし現在は北部が本場となり、平成19年(2007年)に南部は中央卸売市場から、地方卸売市場として認可を改めて再出発しています。
 
「地方卸売市場」と「中央」は認可が都道府県か、国(農水相)か、という違いのほか、地方市場の場合は市町村・第三セクター・民営企業が開設することが可能です。先の国会で改訂された卸売市場法が施行されると、中央卸売市場の開設者も規制緩和されるのですが、地方はさまざまな開設・運営形態がすでにある。
実際、自治体が市場を手放し、「民営化」したケースもありますが、この川崎南部(地方卸売市場になってからは「幸市場」の愛称をおもに使用)は、卸・仲卸事業者がみずから運営しています。
 
そうして地方市場に移行するにあたって、改めて打ち出したのが「めききのチカラ」
これまでの市場としての役割やモラルを守りつつ、より自由度の高い活動をし、市民・一般消費者に直接はたらきかけができるように、市場の中からの改革がおこなわれたようです。

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HPには「幸市場について」の項目で「ビジョン」「めききのチカラ」「活動方針」と、丁寧に説明してあります。
その内容はたいへん踏み込んだもので、現在市場外流通が増えていることや、大手小売店による農業生産への参入などにも触れつつ、「2011年の震災以降、食卓に上る食材のすべてを大手小売店に依存することに小さな疑問が生じている」市民に対し、「めきき」による商品選択や、「市民ひとりひとりがめききになっていくことをお手伝い」して、市民の食の安全に貢献するという方針を表明しています。
「いちばいち」も水産の一般購入もこうした取り組みであり、単に「賑わい」ではなく、消費者が市場に積極的にかかわってほしいという気持ちが感じられます。
地方からのちいさな取り組みかもしれませんが、それぞれの地域が自立した取り組みを行うことが大切です。こうしたことがこれからの市場のひとつのモデルとなるといいですね。
 
川崎幸市場のHPはとてもいい文章です。ぜひお読みください。
 
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