築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

運営協議会レポート(前)

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前記事に書きました、東京都中央卸売市場取引業務運営協議会(10.28東京都庁)について、傍聴レポートを掲載します。
長いので今回は前編。
(配布資料はこちら)
 
都からは長嶺事業部長、黒沼市場長をはじめ、幹事として11名、書記として課長級が9名。協議会委員は水産・青果・精肉・花きそれぞれの大卸・仲卸・小売団体などの代表者、青果と水産の労組、その他消費者団体、都議会議員からなる28名です。
委員28名中3名が欠席。2人は都議で公明党細田いさむ議員と、都民ファーストのおじま紘平議員。ちなみにおじま議員は「小池百合子七人の侍」といわれるひとりで、今回から協議委員に入ったのに、初の会議を欠席です。選挙区は練馬。
あと欠席は大日本水産会。これ、豊洲のイベントでカツオの一本釣り体験(安っぽい模型が釣竿の先に付いてるだけの)をしてる団体だ。出荷者。

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まず、配られた資料「東京都中央卸売市場条例及び規則の改正に関わる概要」ですが、概要、といいながら、ほとんどもう条文としてできあがった状態。その内容も、7月の「改正準備会議」で都がいきなり出した新旧対照表の形での
(はこちら。今回の資料にもありますが、こちらもご参照ください)
がそのまま。準備会議の内容は非公開なのですが、懸念を表明する出席者もいたとのこと。いったい会議の何を反映して(反映しないで)都は自分が出した案をそのまま進めているのか。
その態度を見ていると、この協議会に対し、「諮問する」としても聞く耳を持たないつもりなのだろうか、と心配されます。

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そこで、閉会時の「結論」から先に書きますと、会長である中西充氏(東京都競馬株式会社代表取締役社長、競馬のひとに会長・議長をさせている協議会もすごい)は
「本日は13人の委員にご発言いただき、2人が明確に反対、あとの11人の方は条例改正を前提として運用面でのご意見をお出しになった」と、いうまとめ方!!
11人の中にもいた「懸念を表明」というグレーゾーンをばっさり切り捨て、しかも改正前提としているといっても、都の案丸呑みで、とは言ってないのに、そこは考慮せず。賛成でも反対でもない(あまり関係ない?)発言で終わった人もいます。
また、もう一人藤島廣二委員(東京聖栄大学客員教授・各地の条例改正に関わる専門家)も批判的な発言をしていた(実需者ではないので反対、という形を取らない)のに、反対2人という切り方も乱暴すぎると思えました。
 
行政って、こういう一方的な結論ありきなやり方で、ものごとを決めていくのに、世の中の人は「決まったことだからしょうがない」という。決めるプロセスに不正があっても、「決まった」としてしまったら、あとだしジャンケンでも急所攻撃でも贈賄選挙でも「負けんだからしょうがない」になってしまう。
しかもこの条例はまだ決まってもいないことなのです。行政が何をどうやって進めているのか、なぜその方向に進めたいのか、その結果なにが起きるのか、こうしたプロセスを注視して分析することが必要なのではないでしょうか。なので、当然会議の「非公開」とかはありえない、ということ。
 
では、その観点から「賛成・反対」と乱暴に切り分けられた委員発言を見ていきます。
全体に「賛成」の人は、漠然とした感想的なこと、都の出してるキャッチコピーをなぞるような言い回しが目立ちます。
 
なので、発言順ではなく、賛成度の高いひとから、トーン順に(実際の発言順は(1)と示しました)並べてみました。
発言のことば遣いなどには一般的にわかりやすいよう補足・改変してあります。(←)は筆者のツッコミです。
 
[業者・大賛成派(←今回の条例案がいかに卸だけに有利なものか、よくわかる)]
伊藤裕康(水産卸)(1):市場の取扱量、市場経由率が減少する中、卸売市場の状況はきびしい。特に水産で著しい(←豊洲に移転したからだよ)
取引拡大をめざすには、漁獲の確保が必要であり、そのためには改正漁業法、違法操業の禁止が重要だ。また市場業者としてはトレーサビリティの拡大や、HACCP対応の環境で販路を拡げる(←でも豊洲ではHACCP取れないよ)

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より重要なのは条例の内容よりも改正後の運用であり、取り組み姿勢ではないか。法改正、条例改正を契機に、業種間の壁を乗り越えた連携をもって「栄える市場」(←これがキャッチコピー)の実現をしていきたい。
 
鈴木敏行(青果卸)(8):賛成の立場である。条例改正を機に、今後とも工夫改善して市場を公共性のある社会インフラとしていきたい。
 
[都のスタンスに準拠する]
細川允史(卸売市場政策研究所←コンサルやね)(9):廃止となる条文の中には形骸化しているものも多い。相対取引(現行49条「卸売業者は、入荷遅延、せり残品、予約相対取引等の場合で、せり物品を相対取引とする場合は、知事に承認申請書を提出しなければならない」→改正案:廃止)は夜中になるので、事前承認は都の職員が対応できない。
「上場順位」(現行54条「物品の上場順位は市場到着順とする(←差別的取り扱いを防ぐ)→改正案:廃止)もどうか。「取引の単位は重量による」(現行50条)は花きにはなじまない。
三者販売(現行60条「卸売業者は仲卸業者、売買参加者以外の者に卸売をしてはならない」→改正案:報告義務)・直荷引き(現行73条「仲卸業者は、その市場の卸売業者以外の者から物品を買い入れて販売してはならない」→改正案:報告義務)は現状でもちゃんと報告がされていない(現行は例外規定で運用、その場合報告義務)。仲卸は小規模事業者なので、事務体制が十分でなく、報告を出さないからだ(←第三者販売は卸ですが?)
報告義務はあまり窮屈にしてしまうと、市場外との競争(←民営化論に通じる)に対応できない。今回の条例での市場ごとの設定という点を評価したい。事後であっても報告を実行すればよい。
 
杉本英美(公認会計士)(10):都は経営相談窓口などで中小事業者にきめ細かく対応するべき(←前の細川発言のフォロー)
 
鈴木章浩(都議会・自民党)(4):(都が公正取引の監視機能を担保するものとして主張している)取引委員会がいかに機能するかが重要だ。今の取引委員会は形骸化している。
今回の制度改正を好機ととらえ、「内外から」やる気のある事業者を募るなどし、「市場外の取引を市場に引きこむ」(←開設区域の廃止)ことも考えて「活性化」に取り組むべきだ。
 
ひぐちたかあき(都議会・都民ファースト)(5):都は、「市場の発展」のため、業者だけでは取り組みにくい課題に関与していくべき。聞き取りでは変化に不安を感じる業者もいる。都が丁寧に寄り添い、具体的なサポートを行う必要がある。
公正取引の維持は、都が取引委員会にしっかり関与していくことで守らなくてはいけない。
 
[とりあえずPRしろ、というあまり関係ない発言]
竹内誠(生協)(11):都民はよく知らないので、都民へのPRや、「市場の活用」を行ってほしい。

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(PR?活用?の例。1月のマルシェより。ショボい)
 
谷茂岡(地域婦連)(12):こんな大切な話と知らなかったのでびっくりしています。都民はもっと知らないと思うのでPRが必要。消費者には産直が人気。市場経由の産直ができるといい(←???)。
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(こういうことかな?9月の豊洲「えびフェス」にて)
 
[改正案の内容には懸念すべき点がある]
早山豊(水産仲卸)(2):三者販売はすでに一定の割合で行われているが、三者による無自覚な取引の拡大を懸念する。

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条例改正は1:公正取引に寄与する、2:市場機能を維持する、3:売り手と買い手の対等性をたもつものとして運用されなくてはならない。そのため新設される取引委員会の運用が期待される。
市場活性化(←伊藤発言を受けて)」とは単に通過量、取引高の上昇ではなく、地域社会・魚食文化への貢献となるものであるべき。
 
回答:都・長嶺浩子(東京都事業部長):条例改正は産地・実需者のニーズに適確に対応することをめざす。取引委員会は都が主導し、業者との意見交換をはかる。
 
近藤栄一郎(青果小売)(3):条例案によって廃止された三者販売の禁止、商物分離の禁止には、公正さが懸念される。
東京は11の市場があり、規模も特徴もそれぞれが違う。各市場の取引実態を斟酌し、小売に対する丁寧な説明をしてほしい。
長嶺:三者販売については情報共有をはかっていく。
 
[条例内容と、都の進め方には問題がある]
藤島廣二(東京聖栄大学)(13):まず、卸・仲卸に対する都の業務許可が、市場施設による使用許可に変わることで、期間による入れ替わりなども予想され、業者の立場が不安定になってしまう。

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長嶺:卸・仲卸が特別な許可が必要という考え方は、市場以外の流通にもさまざまな形態がある現在、時代の変化によって必要ではなくなった。基本的には今の業務許可の条件を引き継いだものとなると考える。
 
藤島:目的に「都民の消費生活の安定に資する」とあるのはいいが、具体的にはどういうことか?
全国的に卸売市場の取扱量、市場経由率の低下によって、東京都の商圏が拡大している。東京の市場が都民以外にも貢献するということにならいか(←開設区域の廃止)。その結果、都民の税金を使うことが問題だとして、民営化されてしまうのではないか。都が開設者という原則は守られるべきだ。
長嶺:都民のニーズにしっかり対応することが根本であり、役割をご理解いただけるよう都民にはPRしていきたい(←根本的な対策はせず「PR」でなんとかなると言うのは、小池都知事の得意な展開)
 
藤島:「市場の活性化を考える会(今年7月に都が発足)」にイオンが入り、市場関係者が一人も入っていないのはおかしい。レクも政策企画局が行い、なぜ市場担当者ではないのか。政府の規制改革検討会議のように「卸売市場は時代遅れ」などの見当はずれな考え方で進められるのではないか。そもそも「市場の活性化」とは何か。

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9月16日「豊洲市場と卸売市場法を考える会」のシンポジウムにおける北條勝貴教授の資料
松田健次(市場政策担当部長):イオンはSDGsを含め、多様な知見の方に入ってもらうという趣旨である。政策企画局とは私も兼務しているが、市場が重要であると、都全体で認識しているからだ。活性化とは何かは、議論の中で進めていきたい。
藤島:考える会の人はここに来て説明するべきだ。
 
(考える会の資料・概要はこちら)
 
[反対]
あぜ上三和子(都議会・共産党)(6):7月の改正準備会議後に11市場での説明会・意見交換をしたというが、具体的には何回おこなったのか?
長嶺:準備会議は4回、その後11市場それぞれで説明会、都のHPでの意見募集、業者との意見交換は今ここで回数はお答えできないが(←うしろで都職が大勢PC開いて待機しているのだから、調べればすぐわかるのに)業界団体の会合で説明をしたり、個別に意見交換をしたりした。
あぜ上:卸売市場の機能とは、「資本の大小によることなく」地域経済に寄与することではないか。
つい最近、札幌市では、現行法の規定をほとんどそのまま残す条例案を出した。これは40回以上議論し、業界団体と100回以上意見交換をした結果である。
(札幌の改正案はこちら)
 
規制緩和については、現行法でも「例外規定」という形でおこなわれており、三者販売については水産で18%、青果で5.3%という状況である。しかし都の条例改正では「例外」ではなくなり、限度の設定もない。目利きの仲卸、地域店がさらにきびしい環境となることが予想される。
 
都の世論調査では、消費者・都民は「安心、安全でなるべく新鮮な食品を、低価格で安定的に手に入れる」ことを望んでいるとされる。
今回の条例案で、特に懸念されるのは「買受人の明示」「卸と仲卸の兼務規定」が廃止されることだ。

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[大反対]
中澤誠(水産労組)(7)の長嶺部長とのバトルはすばらしいので、次回後編で完全再現!お楽しみに!
 
なお、発言がなかったのは
水産小売、食肉卸・仲卸・小売、青果仲卸・労組、花き卸・仲卸・小売(花きは仲卸と小売が大反対だと言われているのに)、農協、主婦連でした。
 
東京都はこのまま押し切って12月の都議会で採択をはかる予定です。
 
都庁に声を届けましょう。
以下サイトには都議会宛のフォームもあります。そちらにも投稿を。
運営協議会委員・港湾委員会所属の議員宛にメール・FAXも。
 
宛先はこちら。
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/iken-sodan/otoiawase/otoiawase/goiken/index.html
http://www.metro.tokyo.jp/english/contact/index.html
FAX:03-5388-1233