築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

「江戸前場下町」徹底批判。

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2020年1月24日、豊洲市場に「賑わい創出」事業として堂々オープンした江戸前場下町」
なんと読むかわかりますか?「江戸前・じょうかまち」です。「えどまえば・したまち」と間違う人も多いですが、市場関係者からは陰で「ばか町」のあだ名が定着しているそうです。
コンセプトは"市場の城下町"で"場下町"だそうですが、そんな造語より場外でいいのでは。江戸時代に豊洲はなかったし。

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このネーミングで「わぁオシャレ」「美味しいものたくさんありそう」「最先端」「行ってみたい」と思う人はどれほどいますか(その前に読めないし)?
これは(賑わいを創出したい東京都と江東区で)懸念となっている千客万来施設」が2023年まで開場延期となったため、それまでの三年間の暫定施設として作られた仮設の商業施設。わずか三年で取り壊すものを公共の市場敷地に作ることも「ばか町」呼ばわりされる一因ですが、実際オープンした施設は、これで三年持つのかどうかあやぶまれるしろもの。「土曜マルシェ」の二の舞となることは必至。
あまりにばかばかしいのか、誰も持ち上げ(提灯記事がほとんど出ていない)も、批判もしていませんが、市場敷地内の施設です。卸売市場条例改定の方向性もあるので、ここは厳しくチェックしておきたいところです。
 
その前に、2年目を迎えた豊洲市場はどうなっているかというと、新年早々に7街区の荷捌き場で壁が30㎝ズレて陥没していることが発覚地盤沈下が急速に進行しているとみられています。
また、昨年の死亡事故が検証されないまま、エレベーター事故が再発。都は「徐行」の貼紙だけで対応してきましたが、今回はターレではなく、歩いて乗ろうとしてドアが落ちてきてはさまれてしまったそうです。
 
取引については、今年も初荷(1月5日)のマグロが1億9320万円でセリ落とされたことは報道されていましたが、その背後で、取扱い量・売り上げの沈下は止まらず。水産の入荷は、初荷翌日で1034トン、昨年の豊洲市場での(1月7日)1283トンよりもさらに減少し、連日の入荷は1300トン前後。築地ではあたりまえのようにあった2000トンを超えることはほとんどありません。
東京都が移転の根拠とした予測に、豊洲移転で取扱い量が「狭い」築地から大幅に増加する、2023年には2017年(築地)から1.6倍になる、というものがありました。これは開場前からすでに、このアクセスと動線で増やせるわけがない、と、批判されていたことです。
 
いまだに問題となっていることの一つに、買い出し人のための駐車場の不足があります。買いに来ようにも駐車場がなければどうしようもない、これで売り上げが伸びる訳がないのに、6街区のタイムズ駐車場は1時間待ちのこともあり、さらに30分400円。逆に水曜日などはガラガラになっているそうですが。そんな駐車場問題、6街区の一番手前の路面という好立地に、昨年一時的に、100台規模の臨時駐車場として開放。買い出し人からもホッとした、という声が出ていたのですが。
その場所は問題の「千客万来施設」の予定地。出店業者の撤退が相次ぎ、現状「大江戸温泉物語」の万葉倶楽部が2023年と大幅延期で開業予定、という曖昧な状況です。

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東京都は「賑わい創出」として、この空き地で「おいしい土曜マルシェ」を開催、「豊洲の魚が買えます!」と言って小さな移動販売車的なものを出したり、市場と関係ないキッチンカーを出してみたり、大物ゲストに「豊洲丼?知らないですね」と笑われてみたり。結果、集客も惨敗状態になりつつも、インパール作戦のごとく、意地で(?)続けてきました。
問題は、それが都の市場関連予算(都民の税金)をドブに捨てていることと、そのせいで駐車場(土曜だけのイベントなのに、毎日)が使えないことです。この場所は、今はなんと観光バス用の駐車場となっています。よほど買出し人に来てほしくないらしい。
 
こんな現状で、東京都が今回オープンしたのが暫定施設「江戸前場下町」。
5街区青果棟前の、こちらも交通動線としては一等地となる空き地は、千客万来施設の立体駐車場450台の予定地(この駐車場ができても施設の客向けであり、市場関係者は停められない)です。

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そもそも一般客の仲卸購入ができない豊洲市場で、観光客を呼び込むことが何の収益に繋がるのか、それが取扱い量1.6倍の算出根拠なのか、まったく不明なのですが。
 
さらにこの開業日1.24は明らかに中国の春節狙い。しかし、今年の春節インバウンドがどうなったのかは、連日の報道にてみなさんご存じの通り。
インバウンド頼みがそもそも不安定なことを露呈した上、観光でお金を落としてくれる外国人を、お財布としてしか見ないのは、移民を「安い労働力」と呼んで憚らないのと同じでは。

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結果、豊洲市場の見学コースも関連・飲食も(築地場外も)、京都並みにガラガラとなっているわけです。写真は2月8日(土)。
そもそも豊洲市場はマグロのセリ見学も面白くないし、仲卸も見られないしというのが広まるや、外国人観光客の来場はあっというまに激減。元々少なかった外国人観光客が、コロナウイルスで最低限まで減っている状況です。

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参考までに、これは同日の銀座なので、豊洲だけのことではないのですが。

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悲しいことに、この江戸前場下町(外国人には意味すら伝わらないネーミング)の開業前のイメージ図は、外国人観光客ばかりが描かれているという代物。「築地のように」外国人観光客が押し寄せてくれたらイメージアップ、売り上げアップ(市場の売り上げとはまったく関係ない)と、プレゼンされた形跡がうかがえます。
 
基本情報としては、この施設は三井不動産が整備・運営事業者として、東京都が推進する千客万来施設事業用地を活用した賑わい創出事業」として、昨年4月に選定されました。土地所有は東京都のままであり(市場敷地)「一時使用を目的とする土地賃貸借契約」の扱いで、建設費用は三井不動産の負担、利益も三井不動産のものになります。

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(場下町内の案内図とリーフレットのラック。中央紺色の場下町リーフレット以上に、左右各2コマ使ってのららぽーと豊洲のパンフがめだつ)
 
それでも実際は市場敷地なので、都の説明ではテナントは一応「関連」扱いになるらしい。そして三井からリース契約するテナントには、総額6億円の補助金が(対象はプレハブ増設や電気ガスなどのインフラ、冷蔵庫・冷凍庫、照明や什器など。築地から移転する際の市場業者に対してとはえらい違い!)。
「賑わい創出」のため、お金払って入ってもらう、それも市場会計から。どれだけ人気ないのか、豊洲市場、お金払わないと入ってもらえないような施設作って、賑わうのか。

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そんなテナントは全20軒(うち1軒の海鮮BBQ・WILD KINGDOM TOYOSUは春オープン)。
関連扱いといっても、豊洲市場の業者はかつお節の和田久(関連)、山茂(水産仲卸)、つきじ神楽寿司(飲食)、にしかわ(青果仲卸)のみ。あとは築地場外から杉本刃物漬物の吉岡屋を誘致。そして「築地海鮮丼・江戸前場下町スタイル」なる店も。築地なのか豊洲なのかどっちを売りにしているのか

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建物はまんなかにイベントガーデンをはさんで、右に物販のマルシェ、左がフードホールと分かれており、一番奥に渡り廊下というつくり。どうしてこうも、あえて狭く通りにくくしたのか、意味不明な設計。観光客がリュックしょってスーツケース引いてきたら(ロッカーはない)大混乱に。
 
まず、フードホールの方にはお寿司屋さんが三店舗、すべて立ち食い。この値段で立ち食い?

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他の店も、一番奥の「全室個室」の海鮮焼・海味(うまみ)以外は立ち食いかカウンターが中心。いまどき「いきなりステーキ」も座れる席を作る傾向にあるというのに。
マルシェ棟の入り口の築地海鮮丼にいたっては、テイクアウト専門。カジュアルさを打ち出そうとして、格差をつけてしまっているかのよう。
寿司屋以外はガーデンの赤い傘の下で江戸前の情緒を味わって食べてください、と言うことらしいが、冬なのでお客さんは敬遠ぎみ。たぶん真夏でも。そして雨降ったら最悪で、築地海鮮丼なんかどこで食べるんだろうか。

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気になったのがこの出入り口の狭さ。もしかしたら季節がいいときには開放するのかもしれないが(食品店なのでそれもあまりよろしくはない)、商業施設の通路としては異様なまでの、入る人と出る人がすれ違えない、家庭のドアのような幅。ここを丼を持って出入りしろと?
 
それに観光客にとって、食事時間は貴重な「座って休む」時間でもあります。ましてや豊洲市場のように延々歩くところに来て、立ち食いしたいだろうか。高齢者も多いし、子どもはカウンターに届かないことも。豊洲駅周辺のタワマン住民が来るとしても(駐輪場あり)、やはり子ども連れでは敬遠するのではないか。

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豊洲市場周辺では、現在「WEST SIDE STORY」が上演されている360°シアターが盛況ですが、周辺に飲食店がないのが悩み。最近DタワーというJALホテルの入るビルができましたが、そこに飲食テナントは「汐待茶屋」一店のみ。さらに豊洲市場の向かいには、オフィスビルが建設中。
この人たちなら、スピーディなランチのニーズがあるかもしれません。実際築地の場内にも多くのサラリーマンが来ていましたから。
ただし、それをして「賑わい創出」と呼ぶのはどうか。ここが繁盛しても市場の売り上げにはならないのです。

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対してマルシェ棟の方は、完全におみやげ店モード。みやげ処豊洲ICHIBANなどは原宿や嵐山かというセンスですが、これは高速サービスエリアなどを運営している会社が出店しているんだそう。

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(ターレーのプラモデルは築地市場仕様」。連結するねこ車は豊洲では使えない)。
あまりにベタな品揃えに、いつの時代なのかと不安になりますが、関連棟(6街区)の伊藤ウロコなどの売り上げを圧迫するのではないか。

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超高級価格のフルーツのにしかわは別として、食品販売で目立ったのが、とにかく試食を勧めることです。
かつおぶしの和田久は関連棟でも試食を勧めていますが、どこの店も通路を通るお客さん(入店する前から)にぐいぐいと試食を勧めまくっています。

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食品販売の職歴がある筆者からすれば、これは「売れなくてあせっている」と見えますし、あまり試食を押しつけていると、ゴミやお客さん同士がぶつかるなどのトラブルも生じやすいのです。
そしてこのオープン時にコロナウイルス・パニックという最悪のめぐり合わせ。みんなマスクしてますし、衛生面を気にするので、むしろ試食に手を出す人はよく食べるな、と感心するほどです。けっこう食べてましたが。
で、買っている人は少ない。店も狭いので、扱い商品自体が少ない(豊洲ICHIBAN以外は)のも買い物につながらない一因だと思います。
 
繰り返しますが、この施設や観光客誘致は市場の売り上げとは関係しません。だからといって、無駄な「賑わい創出」に東京都が固執し続け、敷地内で市場を圧迫するような事業をしていていいのでしょうか。
豊洲という僻地で展開されていることは、報道も少なく、見えづらいところがあります。
しかし、こういう事業を見過ごしていると、ここを実験台として、地方で起きているような民間への市場開放による虫食いが、豊洲以外の東京の市場にも及ぶ契機とされることも懸念されます。
 
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