「民営化?!」横浜南部市場レポート
他の市場はどんなとこ?
今回は市場関係者には「民営化?!」と騒がれ、また、神奈川県民には「ブランチ南部市場オープン!」とはしゃがれている、9.20にリニューアルした、横浜市金沢区の元・横浜市中央卸売市場南部市場(分場/青果・水産・花き)に行ってきました。
正確にいうと、国の改正卸売市場法は来年6月の施行なので、民間企業が市場の開設者になる「民営化」は現行では可能ではありません。今回のリニューアルではダイワリース(どんな会社かは後述)が市場の土地の一部を使って、モールを運営することができるようになった、おそらく土地そのものも、横浜市の特別市場会計ではなく、一般会計に繰り入れ、「市場開設」ではない目的での賃貸が可能となったものと思われます(築地市場の現状)。
その後、南部市場の位置づけは「本場を補完する加工・配送・流通」となっています。
水産・青果の大卸は元々、本場と同一事業者なので統合。
仲卸・関連事業者は今も同じ場所で、表面的には同じように営業をしています。本場に事業を移し、あるいは本場の「売買参加者」となって、「市場外」である南部市場で営業できる、とされ、共同での売買参加者となる名目で「南部市場管理協会」という形をとっているようです。南部市場は本場の「指定保管場所(市場外)」という扱いになっています。
花きだけは、卸二社が協同組合を設立し、地方卸売市場として独立(場所・営業は変わらず)。
また、関連はもともと小売をしていましたが、リニューアルで市場の所属ではなく、「食の専門店街(南部市場共栄会)」なる名前になって、より一般向け機能を強めようとしている、というのが、現状となります。
ほかにも敷地内には市場専門のロジもあるのですが、それぞれが別の事業体となっています。
閉場による法的な位置づけの変更によって仲卸・買出しともにダメージをこうむることが少なくなるよう、なるべく元の業態を維持できるようにしているとみえました。しかし、敷地全体の様子としては、ダイワリースが前面に出ている感じですね。
しかし、広くて人口も多い横浜市で中央卸売市場が一カ所だけって、大丈夫なんでしょうか。横浜の首長は林”カジノ”文子市長なので心配です。
新杉田を離れると、工場や倉庫が広がるふ頭の風景。大通りに面して、やたら駐車場の表示が目立つのが、南部市場です。
敷地全体はこんな感じ。ど真ん中がブランチ南部市場ですが、それは後にします。
まずは旧・卸売市場。
ブランチのテラスから水産棟入り口をのぞむと、こんな感じです。
船着場もあり、分場とはいえ、本格的な施設が整備されていました。1987年に全国初の海から海水をくみ上げる「活魚用海水供給施設」も。
また、水産部では20軒の仲卸が、毎月第一・第三土曜日は一般開放の土曜市をしているそうです。「柴口このみから聞いた」と声をかけると「海鮮つみれ汁」のサービスがあるそうです。柴口このみさんとは・・・?
建物の構造は開放型でトラック通路をはさんで冷凍・冷蔵倉庫。屋上は駐車場で、連絡ブリッジで青果とつながっています。水産には「がってん食堂」、青果にも小さな食堂があります。
その先が運輸会社と、花き。
現在のブランチの部分が大卸・セリ場だったと思われます。
そのブランチ南部市場。
ブランチとはダイワリースが全国で展開する、「コミュニティスペースをそなえた低層モール」ということ。「コミュニティスペース」を設けて地域に還元しますよというのが、公共インフラ用地を取得するための売り文句のようです。
ここの他にも福岡県で「ブランチ福岡下原」として福岡市東部市場の跡地を取得(市場は青果三市場の統合・移転により2016年に閉場)。ほかにも操車場や競輪場、UR、札幌月寒ドーム跡地などをつぎつぎと取得しています。
いわゆる「民営化」のノウハウをもっている会社ということになります。
そのコミュニティ・スペースなるものはここでは「歴史展示コーナー」と「食の交流スペース・NANBU BASE」、そして今後開業するキッズスペース付オフィス「ママスクエア」が相当するようです。
ご他聞にもれず、閑散として休憩スペースと化しています。NANBU BASEでは食にまつわるイベント、ということでしたが、案の定プログラムは少なく、来年以降「レンタルスペース」としても利用されるとのこと。週変わりの催事場と化すかもしれません。
ブランチ全体としても低層で、倉庫のような建物なので、仮設という雰囲気がいなめず、今は開店バブルで賑わっていますが、なにかあったらすぐに業態変更、テナント入れ替えなどが予定されているのではないか。
テナントとしては大きな敷地を占めているのが、釣具の上州屋、家電のノジマ、クリエイトSDドラッグ、100円ショップのSeria、そして大型スーパーのave(エイビィ)です。
ほかはチェーン店的な飲食店がぱらぱら。実は開業時は15店舗しかオープンしておらず、実質テナント募集状態。レストラン不足をキッチンカーで補っています(キッチンカーは開設者のリスクが少ないので、豊洲でもどこでも活用されている)。
そんな中、市場からシフト(小売展開)をしたのが、水産の「神水産」と、青果の「みなみ」、そして今後水産部の食堂「がってん食堂」がこちらに移転するそうです。
しかし、関連(食の専門店街)も含め、見てまわると一番安いのはスーパーave。大ロットでの購入を前提とした大量仕入れ・大量陳列の展開は、一見「市場」と似てもみえますが、生鮮も輸入の規格品が多く、いわゆるコストコのよう。そしてブランチに殺到した(車で来場)買い物客が一番買っているのは、当然aveなのです。
南部「市場」自体はすでに閉場という扱いになってはいるのですが、お客さんは普段買い慣れている量販チェーンのノリを求めて、ブランチだけに流れてしまう。そのことが、卸売市場の機能に対する一般の理解度を下げてしまうのではないでしょうか。市場敷地を使って、市場ではない流通を展開させることには、こうしたリスクがあります。
関連事業者は「食の専門店街」として、一般向け営業主体に乗り出したのですが、このリスクを克服することが課題となります。
正門を入って左、ブランチと並んだ建物はリニューアルされてないので、どうしても比べると暗く見えます。
リニューアルに際してのコンセプトは、かなり各業者さんに任されているようで、店内をリフォームした店も、そうでない店もあります。閉店してしまった業種もあり、米・冷食・漁協・のり・包装・クリーニングといった看板のところが閉まっていました。
一般向けとして変えていこうとしている点は、営業時間の延長。一応6:00~18:00の営業と表記されていましたが、従来通り14:00には閉める店も多く、このヨコカンさんは本場の場内と場外にあるお店なんだけど、本店のコンピューターと接続して決裁しているから、12:00で閉めないといけないそうです。また今後は日曜の営業もしていく、ということですが、それもお店ごとにまちまち。
これからも業者向けの卸売を主体にしていく方針のところと、リニューアルに前向きな店がわかれていくようです。
元の市場食堂「南部亭」は、和食の蒔田、海鮮の鈴、洋食キッチンK、中華一品香の四店が入ったフードコート形式。もともとは市場だけでなく、近隣の倉庫街で働くトラックドライバーなどにも人気だったようです。
最後に、近隣の様子。
南部市場のある京浜埠頭は、食品団地、木材港といった流通業の拠点ですが、ヨット倶楽部のベイサイドマリーナに隣接したホテルと、1998年にオープンした三井アウトレットパークがその雰囲気を変えました。
現在、アウトレットとホテルは2018年より建替えのため閉館。来年4月のオープンで、敷地面積32000㎡延床面積は建替え前の19744㎡から54000㎡へと1.7倍に。店舗数も170軒と二倍近くなります。
南部市場から車で10分とかからない。開店バブルの恩恵は南部市場にも訪れるでしょうが、その後、一般客を相手にする場合はここと競合することになります。
関連で話を聞くと「洋服がメインらしい」などと安心しているようでしたが、これがオープンしたあと、ダイワリースが「南部市場」の業態をどうするのか。
アウトレット、大型スーパーという、市場流通と実際は真逆の流通と全面的に向き合うことになる、旧・南部市場。「民営化」以上のリスクを感じさせてなりません。
[参考]
すべての市場がイオンに?
19.9.16「豊洲開場1年」シンポジウムでの北條勝貴教授の発言はこちらから。
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12月都議会に、現行条文を大量に廃止し、ほとんどの規制を撤廃する条例改正案が提出されます。
卸売市場条例は、市場機能を守るきちんとしたものにしてください!
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