築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

日比谷公園はどうなるの?

こうなります?!

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/07/05/05.html

 

こうなったら大変ですよね。

神宮外苑が騒がれていますが、こちらでも都心の貴重な森が伐採されて、ビルの谷間の商業施設の前庭化されようとしています。どちらも東京都と、豊洲市場江戸前場下町や晴海FLAGでおなじみ、三井不動産のコラボです。

8月4~6日、園内でオープンハウスがあったので、行ってきました。

気温は35℃以上、扇風機だけのビニールテント。他のイベントの余りもののネックタオルとパンダのうちわが配られましたが、樹木を伐採してさらに東京を暑くしようとする人たちのセンスはすごいですね。

オープンハウスで「都民のみなさまの理解を深めていただく」のは、いずこも同じで、HPのPDFをパネルにして並べるだけ。都の職員から説明がきける、と言っても、パネルに書いてあるだけの紋切り型の返事しか返ってきません。

この日は再開発に反対する日比谷公園の歴史と文化をこよなく愛する会」のみなさんの企画で「オープンハウスをみんなで見る会」が開かれ、代表であり、元日比谷公園のサービスセンター職員だった高橋康夫さんによる、都職よりよっぽど詳しい解説を聞くことができました。

https://hibiyapk.wixsite.com/home

署名はこちらから。

キャンペーン · 日本最初の近代的洋風公園・日比谷公園の歴史と1000本の樹木を破壊しないで! · Change.org

(Change.orgのシステムは署名後に寄付を要求しますが、これはChange.org運営のためで、署名団体への寄付ではありません。寄付をスルーしても署名は有効です)

 

パネルの解説のあとは実地見学も!!

なんといっても気になるのはここです。

上が都の資料、下が「愛する会」の資料。

日比谷通りを跨ぐ連絡橋、左(南)側は「内幸町一丁目街区開発事業」という巨大再開発地区とブリッジするデッキ(再開発はデッキが大好き)。ここには230m級のビルが4本(NTT、帝国ホテルなど)のまんなかに「緑の空間」という人工地盤でかさあげ。公園との「一体化」は、まさに公園を民間の「前庭」化するものです。

右(左)側は既存の日比谷ミッドタウン(三井)。高層ビルの低層エリアには最初から「デッキ」に接続するようなゲートが設計されています。

「愛する会」のみなさんのおっしゃるとおり、まさに「三井の森」に。

都立公園が公道ではなく、民間ビルからのアクセスというのは、従来はなかったことだそうです。それというのも、この大手町・日比谷エリアが国家戦略特区であるから可能になったこと。

 

また、デッキ部分も「緑化する」と言っているので、明治公園-国立競技場のデッキのように、コンクリの地盤の上に植栽したものを「公園面積」に繰り入れることになるでしょう。

 

そしてデッキの公園側にはスロープとエレベーター。現在はそこにはクスノキなどの巨木が。

東京都は神宮外苑などの件の悪評で「樹木伐採」と言われることに非常に敏感になっているそうで、HPの事業計画でも「樹木の取扱いについて」として「伐採せず移植」「樹木医の診断」などと書いています。オーブンハウスでも「移植します。伐採ではありません」と言い続けていました。

 

 

現在の日比谷公園の案内図(公会堂前)。巨木があることが誇らしげに書かれています。

こうした巨木が短期間に簡単に移植ができるものでしょうか?

現に国立競技場付近では移植されたイチョウが枯れてしまっています。

そして高橋さんから、都が信用できない衝撃の事例が。

この看板の前のにれのき広場の現状がこちらです。

公会堂とバラの咲く第二花壇の間はその名のとおりニレの巨木が23本ある土の地面でした。

2019年「埋蔵文化財の調査」として突然フェンスが立てられ、あれよというまにその内側ではにれのきを伐採。そしてフェンスがなくなったときは、地面はアスファルトに。こんな抜き打ちをする東京都。

このアスファルト地面にしたのは、見てのとおり、イベントスペースの確保でしょう。日比谷公園オクトーバーフェストが大入りで、ついには10月以外にも開催するようになりましたが、ほぼ毎週のようにこうしたフードイベントが行われています。

近隣はオフィス・官庁街なので、ビアガーデンの需要が多いのでしょうが。しかし平日の夜ならともかく、昼間も土日もやっているので、業者さんも損しているのではないか。イベントのやりすぎで、出店するお店にも独自性がなく、わざわざ高い値段の縁日フーズをこんな環境で…

この殺風景な空間は、都のオープンハウスじゃないですよ?「日比谷ビアガーデンフェス」です。こんなビアガーデン、どうですか?

東京都の計画では今年9月から10年間をかけてエリアごとに段階的に「整備」していくのですが、一番に予定されているのが、このにれのき広場に面した「第二花壇」から噴水・小音楽堂です。
第二花壇はバラが植えられ、まんなかの芝生は立ち入ることができません。景観のための芝生です。

噴水も高橋さんによると、すでにイベント時には「水がかからないように」流量を制限することもあるそうですが、計画を見ると縮小されるようです。

 

そして小音楽堂は無料コンサートなどで気軽に楽しめる憩いの場。都の計画では

・芝生地に自由に立ち入ることのできる芝庭広場

・小音楽堂のステージや観覧席の高さを下げて噴水広場と一体的に

・イベントやマルシェに活用し、イベント以外のときは広く開放

要するに、全体を「一体化」して拡げて、イベントスペースにする、ということです。こういうときにやたらとバリアフリーを持ち出して車椅子のアクセスなどと言いますが、車椅子(形態によるが)で芝生が移動しやすいでしょうか?そもそも今の第二花壇は車椅子だけが入れない、のではなく、誰も入れないのです。そのことによって芝生が守られ、結果的に周辺が憩いの空間になっているのではないでしょうか。

 

しかしこうした設計は最近の公園再開発のトレンドであるようで、下リンクでは

「最近の公園の"三大最終兵器"はスタバとデッキと芝生」

と、慶応の教授が悪びれることもなく言い放っています。ここでのデッキはおそらくウッドデッキのことで、連絡橋とは別だと思われます。カフェは、スタバ以外のチェーンが入ることもありますが、新宿中央公園南池袋公園などはそのスタイルであり、行政やデベロッパーが「成功例」「にぎわい」として持ち上げる代表です。

 

座談会:公園がそこにあり続ける意味とは|特集|三田評論ONLINE

 

2027年からの整備とされている、日比谷公園で一番森が深い、北側の三笠山エリアなども、当然樹木伐採も問題になってきますが、都の計画では周辺とまとめて「大芝生広場」となっています(パークプラザなる構造物も計画されています)。

見てのとおり、起伏のある地形は大名屋敷の築山という由緒をそのまま遺しています。

また、高橋さんの解説によると、園内に多数配置された手前の石は、100年前の開園当時に設計者の林学者である本多静六博士が江戸各地から集めてきた由緒ある石ばかりだそうですが、その調査はいまだに行われていないとのこと。

同エリアにあるテニスコート(移設)は日本初の公営テニスコートであること。

日比谷公園はそれ自体が文化財でもあるのです。

「愛する会」のツアーでは、こうした歴史・文化財の解説も充実していました。

 

同じ慶応のサイトですが、こちらは再開発論ではなく、日比谷公園の歴史をまとめたもの。

日比谷公園から考えるほんとうのまちづくり|特集|三田評論ONLINE

 

東京都の計画のあちこちには「歴史をQRコードで紹介する」とあり、要するに看板を立てるから勝手にスマホで見ろ、ということですが、現物を調査もせずに壊して簡単な解説だけを残すのでしょうか。

おりしも大阪市役所での美術品駐車場放置が問題になり、維新の会の顧問が「デジタル化して現物は処分(売却?)すればいい」と発言したことと類似に思えますが、

ここで私たち「築地でええじゃないか!」としては、思い出すべきは築地市場ではありませんか!!

築地市場も100年近い歴史のある文化財であり、当時の最先端の設計でした。欧州視察をした東京市の専門職たちが鉄骨・コンクリート・ガラスと鉄道引きこみという建築の近代日本のパイオニアであったわけです。

本多博士を中心に、近代都市計画公園の第一号を作り上げた日比谷公園と、築地市場の創造の情熱は同じです。

 

そして日比谷公園といえば、なんといっても野音(大音楽堂)です。

現在の野音は建て替えで三代目ですが、築地市場と同じように、シンプルな屋根なしのコンクリート打ちっぱなしは頑丈で年月に耐えています。昨今の手抜き工事とはちがう。

ここでもバリアフリーが前面に出され、トイレやスロープが使いにくい、と言われていますが、それならトイレを新設すれば済む話ではないでしょうか。

さすがに野音を完全室内建築にする計画ではないようですが「天候に左右されにくい」「安全に快適に楽しめる」ように屋根を拡げるそうです。それでまた「歴史をQRコードで紹介」するのでしょうが、RCサクセションなど数々の雨の中の野音伝説」は、どこにでもある「快適」な空間では生まれなかったものです。

 

野音入り口だけでなく、公園の各所に立てられたこの看板に、三井不動産はじめ再開発事業者のロゴがでかでかと書かれていることが、音楽ファンの間からも不安視されています。

オープンハウスでほかの参加者の方が都職員にこの看板のことを指摘していましたが、「それは野音100年をいっしょに盛り上げるという意味であり、野音の整備自体は東京都がやります」と回答していました。

が。

都立日比谷公園大音楽堂の再整備基本方針|東京都

こちらによりますと「民間のノウハウを活用して再整備」であり「今年度中に公募により民間事業者を選定」となっています。

はたしてそれは、整備(建て替え)だけにとどまるのでしょうか。

野音の運営自体が指定管理者、あるいはPFIになる懸念もあります。

 

江戸の大名屋敷と見附、100年前の近代化による西洋公園第一号。日比谷公園の歴史とはそれだけではありません。野音の歴史、そしてまた、日比谷公会堂浅沼稲次郎が刺された昔からの政治・社会運動の歴史もあります。野音はデモの出発点として多用され、国会のお膝元ということで「年越し派遣村」の場所にもなりました。

民間PFIになっても、そうした活動に認可が出るでしょうか?

 

公共を取り戻せ!!

都庁に声を送りましょう!!

あなたの声をお寄せください|東京都

 

追記:内幸町一丁目再開発はこんな感じです。

とにかく音がすさまじく、公園内にも響きわたっていました。公園の「整備」と同時進行によって、都心の貴重な「憩いの場」は長期間にわたって、騒音の只中に置かれることになります。