築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

葛西市場と臨海公園

ちょっと前、真夏のころになりますが、葛西中央卸売市場に行ってきました。

と言ってもごはんを食べにいっただけですが。

寿司のない寿司屋として有名な「小池寿司」です。小池都知事とは関係ないです。スタミナ鉄板定食800円。その名のとおりです。寿司はないけど、メニューは豊富です。

しかし。

もう一軒あった「仙泉」がなくなっていました。小池さんの独占です(小さい喫茶がある)。

さて、市場はこれで終了。今回のテーマは、線路の反対側、葛西臨海公園です。

これがJR京葉線葛西臨海公園駅北口。

これが南口です。

この葛西臨海公園、ガラスドームを抱く水族館だけでなく、観覧車やホテルを備え、園内はパークトレインが走る広大な公園です。しかしそれだけではありません。

人工なぎさ、干潟。

池と湿原。バードウォッチングでも人気です。

とはいえ、この大自然、すべて人工です。

1972年、この状態からの東京湾再生、「葛西沖開発区画整理事業」がはじまり、公園として整備されることになります。17年をかけ、1989年、人工なぎさが完成し「葛西海浜公園」がオープン。さきほどの鳥類園は緑が成育した5年後の1994年です。

東京湾の荒廃はキティ台風の災害に加え、沿岸、内陸の工業地帯による環境汚染、それによる漁業放棄など、過酷な人災の歴史です。お隣、浦安魚市場の回では博物館でその歴史を見てきました。

そして荒廃した海を浄化し、魚介類と鳥を呼び戻し、汽水域の干潟や湿原を作り出すのには、長い年月が必要なのです。もちろん森はすべて植樹だし、公園なので園芸種の植木や花壇による緑もたくさんあります。その向こうはバブリーでトレンディーな(そういう年代にできた)トーキョーベイのウォーターフロントです。

しかし人工であっても、ここまで広大な緑のエリアを作り上げたのは奇跡と執念でしょう。先にあげた北口の京葉道路、あの排気ガスとその先の工業地帯、それらのCO2の緩和には欠かせないものです。

しかし。

今、三大樹木伐採王とされるのが、小池都知事、吉村大阪知事、そしてビッグモーター。その小池都知事の東京での三大樹木伐採事業が、神宮外苑日比谷公園、そして葛西臨海公園です。

当初、葛西臨海水族園の改築が計画されたときには、この象徴的なガラスドームの解体が危惧されていました。

www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp

樹木800本伐採、芝生を潰して太陽光パネル敷き詰め、などの危惧が早々に持ち上がったため、なんとこのサイトでは「よくある質問」「ファクトシート」などと反論する気まんまんです。

太陽光パネルは建物の上である、とされています。が、図面を見ると一番目立つのは太陽光パネルの黒色ですね。とはいえ、現在大規模な公共建築はZEB(ゼロエミッション・ビルディング)が義務づけられており、自前で電力をまかなう必要があります。しかし実際は努力義務にすぎず「ゼロ」は空論です。ましてや水族館は水の循環、温度管理、酸素の供給と、電力消費が大きな施設です。そうはいっても、始めた以上は維持しないと魚が死んでしまうのですから、ゼロエミの方に擦りあわせるわけにはいきません。

前記事・日比谷公園編でも書きましたが、外苑に始まり、東京都の樹木伐採が有名になってしまったため、東京都は「伐採」と言われることを非常に嫌がります。しかし、分館(ドームでない方)を芝生ではなく樹林のあるところに移転、現在の鬱蒼とした森の中に建つ水族館ではなく、広々とした人工空間になってしまっています。

そして案の定、民間資本を導入するPFI-BTOで事業計画は出されています。東京都の公園はすべてPFI化しつつあります。葛西はすでにレジャー性が高く、レストランやBBQなどの収益施設も多い。

もともと人工の緑地な上、周辺住民は完全にいません。

しかし、神宮外苑が全国からの献木による造成、日比谷公園が大名屋敷の遺産と明治の洋風化の歴史を持つならば、この葛西臨海公園の森は、高度成長期・バブル期の公害による破壊と再生という60~80年代東京の歴史を象徴する森です。壊した環境を再生させ、今も続く工業と交通による環境汚染を緩和し、ヒートアイランド現象を緩衝する風の通り道となる、東京にとってきわめて重要な、まさに都市の肺といえます。

 

一方で、都市の胃袋である市場、また、同じく湾岸の風の通り道である築地ですが、こちらもいよいよ再開発が。事業者募集は終了し、現在は選考中ということですが、三井不動産×読売グループ(東京ドーム移転?)という噂がまことしやかにささやかれています。

www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp

おまけ。

筆者は魚が苦手なので水族館に入ることはできません。豊洲では横向きのマグロがここでは縦置きだ、と葛西市場とのつながりを感じたのですが、よく考えたら葛西市場は青果と花きでしたね。