築地でええじゃないか! かわら版

築地市場が豊洲に移転して5年。卸売市場が支える消費者と商店街を守るため、東京都とゼネコンの再開発事業の動向をウォッチ。

豊洲市場は今…

東京都中央卸売市場条例に関する会議が開催されます。

f:id:nowarsgnaction:20190816013943j:plain10月28日(月)15:00~(傍聴受付は14:30)

都庁特別会議室A(第一庁舎北塔42F)
東京都中央卸売市場・取引業務運営協議会
 
この会議で都は、前記事で書いた、大問題の「卸売市場条例改正」案を事業者などに提出してきます。事前レクでも仲卸事業者からは反発が大きく、会議は荒れること必至。都はこの案を通して、12月の都議会で可決に持ち込む意図です。ぜひ傍聴にお集まりください。
 
都が7月の準備委員会で出した資料・案はこちら
 
市場法・条例改正の問題点を検証し、豊洲市場の現状を報告した、9月16日の「豊洲市場と卸売市場法を考える会」のシンポジウムのレポートはこちら
 
今回の卸売市場条例改定案は、市場の機能を著しく低下させようとするものですが、その前提として東京都が築地閉場、豊洲移転によって市場取引を弱体化させたことを視野に入れる必要があります。
 
18年10月11日に豊洲市場が開場して一年。まったく報道はされませんが、事前に指摘されていた以上に問題だらけ。その結果、取引が激減、業者への経営圧迫も予想以上、もちろんはたらく人たちの負担も莫大なものになっています。これが日本最大の消費地である東京の市場の現状です。東京の食の流通は、当然産地である全国に影響を与えるのです。
豊洲市場という劣悪なインフラ、ハードの上に、新・卸売市場法、都条例というソフトで運用されることになれば、現在市場が持つ公正で透明な取引が失われるだけではなく、実際の食品流通にも破壊的な影響を与えかねず、産地にとっては存続の危機、消費者にとっては食品の選択肢を失い、価格も企業の思うがままにされることになってしまいます。
 
しかし、豊洲市場はいまだに報道をほとんど入れず、大手マスコミはプレス発表をそのまま書くだけ。市場の内部を暴くことができるのは、築地時代からしっかりと関係者とコネクションを持っている人だけです。
 
そんな週刊ダイアモンド・オンラインの岡田記者の「豊洲一年」レポートはこちら。
 
この記事と、シンポジウムでの中澤誠さん、築地女将さん会の報告も踏まえて、「豊洲はダメじゃないか!」かわら版が外から調査した、一般人でも見てわかる(知識があれば)豊洲市場黒歴史一年をまとめてみます。
 
土壌汚染はいまだに続いています。建物内の空気に影響は出ていないとされるが、9月14日のモニタリングではベンゼンが環境基準の120倍、シアン130倍、ヒ素も検出される、と、開場時からまったく改善していない。
また、こうした汚染物質を地上に押し出す要因となっている地下水位の上昇。もともと地下水位が高く、地盤のゆるい豊洲を、都は(計画段階からだいぶ後退して)地下水位AP(東京湾中等水位)+1.8mで維持すると約束して開場しました。しかし揚水ポンプをいまだに作動させ続けているが、晴天時でも+2.4~3mの箇所も。台風や大雨ではもっとひどいことになっています。
 
また、豊洲市場の売りは「閉鎖型」で完全な「コールドチェーンを実施する、ということ。この夏もマスコミには「冷房がある豊洲はいい」という記事が散見されました。
しかし、岡田記者の記事にあるように「コールドチェーンって言うな」と、卸の会長に言われるほど、閉鎖型は完全に破綻。トラックバースの不備で搬入口が開きっぱなし、ターレは屋内のみで使用するというそもそものルールは無茶で、外や駐車場を走らないと仕事にならない。

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青果にいたっては、駐車場が完全に荷下ろし・保管・作業場所に。
これは卸・仲卸棟に入れない一般の人でも、外から見ればすぐわかります。
ありがたいことに(?)その名もぐるり公園というのがあるので、卸の裏のトラックバースもぐるりと見て回れるのです。

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そんなぐるり公園、眺めだけはいいと思うのですが、いつ行っても閑散としています。6街区の一番汚染が激しいところの裏手にバーベキュー場などをオープンするというおそろしい公園ですから、人が行かないで閑散としている方がいいんですが。
 
しかも市場のまわりに緑地、というのが危ない。「緑に囲まれた環境のいい」市場、が、他にあるでしょうか。
緑というのは、生物の温床です。我々は開場前日に市場の周辺でGを発見しましたが、そのほかにも場内ではアリ、コオロギ、ハエ、ネズミなどの目撃が多数出ているそうです。最悪なのは猛毒のセアカゴケグモで、昨年12月に見つかっただけでなく、今年の夏には「少なくとも7匹いた」とのツイッター投稿もありました。
 
青果についても、ダンボールを野積みにするから、虫がついて入る、
とも言われています。
最近猛毒のヒアリのコロニーが青海で発見されたことがニュースになりました。豊洲市場も輸入品が多く入るだけではなく、距離的にも青海と近いので、心配されるところです。
 
最大の問題は、やはり死亡・重体事故、そしてそれが都によって十分に検証されていないことです。
死亡事故は二件。開場してまもなくターレから振り落とされた買出人の方が亡くなった事故と、エレベーターにターレで乗り込む際に扉にはさまれた仲卸の方の事故です。
エレベーター事故は死亡事故の前にも重体事故があり、対策がなされていなかった。また、扉が上下開閉型であること(左右に開閉するならターレにぶつかって乗員を直撃しない)、センサーの不確実さなども問題視されています。都は検証することなく、エレベーターに「ゆっくり走行して乗る」と貼紙で済ませています。

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また、これは建物全体が常に振動している(それで体調を崩して辞める人もいるほど)せいもありますが、エレベーターや自動ドア、シャッターがあちこちで故障。「常にどこかが壊れている」とのことです。
そのため使用中止や通行止めがあちこちにあり、少ないエレベーターの利用で混雑したり、待ちきれず急なスロープで上下移動をしてターレのバッテリーがあがったり、遠回りして仕事に支障をきたすことも。
 
仲卸棟の建物の振動は4Fの駐車場の車の走行が原因、として、都はついに今年7月には4F通路を閉鎖。客用の駐車場がまた減ってしまいました。
 
もともとアクセスが悪いとされている上、これでは買出人が離れていくのも当然で、仲卸の売り上げは激減。女将さんの話では「場所によっていいところと悪いところがある。入り口に近いところはまだいいけど、移動に時間のかかるところにお客が来ない」そうです。築地では5年に一回クジびきで仲卸の店舗の移動があったのですが、豊洲にはその予定はなし。
 

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入荷も、移転に関する都の想定では築地の1.5倍とかになる、という謎の試算がされていましたが、いまや取扱量は水産で昨年比7~8割。入荷が1000tを割る日が月に何日もあるという事態になっています。
「仲卸店舗が狭く、作業効率の悪い豊洲は、品物が少なくなってやっと回っている。皮肉にも豊洲に見合った入荷量になった」という意見も。
 
それでも駐車場不足は深刻なまま、場内には買出人用にタイムズの駐車場があり1h300円などで築地よりも大幅に高い。それでも入庫1時間待ちのこともあるという、早朝、時間が勝負の市場としては信じられない状況になっています。また、はたらく人の駐車場も徒歩10分かかる有明にまわされている人もいます。台風や大雨でこれはキツい。また、台風ではゆりかもめも運行中止でした。
 

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それでも今年3月までは、6街区「千客万来施設用地」を駐車場として開放していたため、100台規模の客用駐車場が確保できていました

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ところが、5街区(青果棟正面。そもそもこの一番いい立地が市場として使われていない)の千客万来施設立体駐車場(市場の客の駐車場事情は上記のとおりなのに、観光客の車を停めるところです。みんなどんな気持ちでこれを見ているのでしょう)の工事がはじまり、そこで行っていた土曜日の「豊洲マルシェ」なる「賑わい創出事業」を6街区で開催することになり、駐車場としての使用は中止。イベントはおもに土曜日だけなのに、平日も駐車はできず、このスペースを閉鎖。
 
しかも「賑わい創出」どころか、市場と関係ないキッチン・カーなどが散漫に並ぶような「食フェス」、10月5~6日に行われた1周年フェスタでも市場の売り物はほとんどなし、その結果、集客は惨敗続きです。

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芸能人の人が来たりすると、それ目当てで人は集まりますが、出番が終わるとさーっとひいていきます。写真はジャニーズのABC-Zが出た9月の海老フェス。通路の上からみんな双眼鏡で見ています。
エビだけにABC-Zですが、エビのつく芸能人といえば、去年の小池都知事との対談で爆弾発言連発の築地好き歌舞伎役者さんは、もう呼ばれないのでしょうか。ちなみに、このフェスのキッチン・カーも海老モノと、そうでないものが半々くらいでした。

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消費増税でイートインは屋外でもなんでも10%になりましたが、こんな地面は斜めで(もともと地盤がゆるいので波打っている)、ろくに椅子もない環境で食べているお客さんもかわいそうですね。
 
これまででヒットしたイベントは、旧車会や都バスまつりだそうで、結局駐車場だということが露呈されています。
それならいっそデコトラ大会(アートトラック・ショー)をやればいいのに。市場に全国から運んでくるデコトラたちが集結すれば、海外の観光客(豊洲にはほとんど来なくなった)も喜ぶと思いますが。

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あまりに豊洲市場をディスりすぎてしまい、顧客減少に拍車をかけるのは本意ではないので、一般客向けにも「一年でよくなったところ」を、最後にご紹介しておきたいと思います。
 
豊洲駅から豊洲市場までのあいだに、仮設も含め、いろいろなイベント施設ができています。最初は豊洲Pitと、360°シアターくらいでしたが、Team Laboも多くの人を集めていますし、まもなくJALホテルの入る大和ハウスのビルもオープン。360°シアターの「ウエストサイド物語」に来る人も多い。
そのため、バス路線が増えました。
豊洲市場からは築地経由新橋往きと、東陽町往きだけですが、市場前駅では門前仲町や森下往きが停まります。
 

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豊洲駅からこちらには飲食店(Team Laboにカフェがある)もコンビニすらなかったのですが、JALホテルのビルにナチュラル・ローソンが入ります。
このビルには飲食店も一軒入りますが、その名はなんと汐待茶寮です。市場に汐待茶屋(買出人の荷物保管・管理場所)をつくらないでおいて、この皮肉はなにごとか、とも思いますが、とりあえずこれは都とも市場とも関係ない施設。
これができることで、豊洲の飲食店の客を奪う、ということにはならないと思うので、「ウエストサイド」などのお客さんが市場まで足を伸ばしてくれるといいのですが、そうはいっても、豊洲市場は市場前駅からも延々歩くので。開演時間が迫る人にはムリですね。
 
しかし、仲卸が「入荷が減ってやっと仕事が回る」というのと同じく、観光客が減って、飲食店の行列が短くなりました。「よくなった」と言っていいのかどうかわかりませんが、「豊洲に食べに行ったけどあきらめた」はなくなったのではないでしょうか。
 
しかし、消費増税もあり、多くの店が値上げ
そもそも豊洲市場は飲食の店舗面積が広いのに座席は少ない、従業員を増やさないと回らない、といったお店にとってつらいことだらけ。
さらに岡田記者の記事にあるように、電気代が激増。あの、カレーの中栄さんは8月の電気代が145000円。築地では30000円で、都の移転に際しての説明も「集中冷房で効率がいいので」30000円程度、と言われていたのに。

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これは建物全体に言えることで、空調にムラがあるのと排気ガスが入り込むため、場所によって異常に暑くなるそうです。また、湿度が常に高いのも原因。
こうした厳しい状況なので、値上げは仕方ない・・・とはいえ、お客さんにとってはツライことですよね。
 
厳しいお店の常として、メニューの品数も減ってしまいました。これも客足を遠のかせてしまうことになるので、お店としては苦渋の決断だと思います。
「よくなった」こととしては、当初、ビールは缶ビールだったのですが、この夏からは瓶ビールが復活。おそらく瓶は周囲に店が増えて、ルート配送がはじまったからでしょう。禄明軒ではキリン一番絞り、やじ満では赤星が飲めますよ!
 
あとは・・・銀鱗文庫(管理棟2F、みずほ銀行の手前)が積極的に展覧会をやっているので、ぜひ立ち寄ってください。築地の絵でも見て・・・
 

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豊洲市場の問題を検証してください!
卸売市場条例は現行案ではなく、市場機能を守るきちんとしたものにしてください!
 
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